「ビーシュリンプ爆殖への完全ロードマップ」ビーシュリンプを飼育するための基礎知識を飼育歴10年以上のブリーダーが徹底解説

5年以上記事を書いてきたアメブロから引っ越して、2017年より本格的にビーシュリンプに特化した記事を書き始めたこのブログももう5年になります。

ビーシュリンプの飼育歴は2002年頃から始めて、間が10年ほど空きましたが、2010年から本格的なブリードに取り組み、ヤフオクでデビューを果たし、後にローキーズ札幌さんにて専属ブリーダーとして活動しています。

かつて自分が殖やしたビーシュリンプを多くの方々にお譲りしてきた過程で、これからビーシュリンプを飼育してみたい、または始めたばかりで上手く行かないなどの悩みがある方への手助けとなることが発信者としての最も重要な努めであると考えこのブログを立ち上げた次第ですが、記事を読み返してみると一部の人にしか役に立たない限定的な内容であったり、言葉足らずではっきりとした回答を記していない情報が多く、肝心なビーシュリンプを飼育するための基礎知識というものを発信しておらず、5年も経った今になって反省しております。

何事も経験を積み重ねるにつれてある程度怠慢な考えになってくるのは人間ですから誰にでもあることですが、5年という節目ということで、自分も初心に戻って「ビーシュリンプを飼育するための基礎知識」を中心にビーシュリンプがどんどん殖える絶好調の状態、いわゆる「爆殖」を目指すための飼育理論を解説していきます。

これからビーシュリンプを飼育したいと思っている方、または始めたばかりで上手く行っていない方へのお役に立てる内容の記事となりますが、かなり長くなるので目次からご自分の悩みや疑問点などに当てはまる項目を選んで読んでみてくださいね。

目次

ビーシュリンプってどんな生き物?

ビーシュリンプは体長約2~2.5㎝前後のとても美しい淡水生の観賞用エビです。

原産は香港と言われていますが、現在は絶滅したといわれ、人の手によって繁殖された個体が流通しています。

一般的なアクアリウムでは飼育するのはやや難しい部類に入る生物ですが、基本的な飼育方法を行っていれば意外と簡単に飼育や繁殖ができます。

ビーシュリンプの種類

ビーシュリンプは元々黒っぽい透明がかった個体でしたが、愛好家の手によって何年もかけて突然変異や色の濃い個体を選別されてきた過程で、今最も多く流通しているのが代表種であるレッドビーシュリンプで、その後ヨーロッパなどが原産のビーシュリンプと遺伝子が近く交雑が可能な種類のエビと掛け合わせた新種系と呼ばれるシュリンプが積極的に作出され、現在は多くの種類のエビが流通しています。

  • ブラックビーシュリンプ(黒ビーシュリンプ)
  • レッドビーシュリンプ(赤ビーシュリンプ)
  • 新種系(シャドー・クラウド・ファンシーなど)

大雑把な解説ですが、ブラックビーシュリンプとレッドビーシュリンプ以外は大体新種系と解釈してもらえると良いかと思います。

ビーシュリンプの寿命

ビーシュリンプの寿命は約2年前後と言われています。

観賞魚同様餌を控えめにして水温を低めにして飼育すればもう少し長く生きていられますし、血統や種類によっても寿命の長さは変わります。

ちなみに道産子海老が飼育してきた中で最も長寿だったのは黒ビーシュリンプで、約3年半と大往生でした。

ビーシュリンプはどこで入手できる?

ネット通販や一般的な熱帯魚店、ホームセンターなどでも取り扱っています。個人ブリーダーから入手することもできますし、数は少ないですがビーシュリンプの専門店もあります。

その他、ヤフオクなどでも入手が可能ですが、初心者にはリスクもあるので、ある程度飼育に慣れてきたら検討してみるのも良いでしょう。

ビーシュリンプの飼育「基礎知識」

広告

ビーシュリンプの飼育方法は、一般的な観賞魚飼育とそれほど大きく変わらず特別な設備などは必要ありませんが、エビが元気に暮らせるための環境づくりが大切です。

水槽の立ち上げ方

水槽内で生物を飼育するには水をきれいにする濾過が必要なのはご存じだと思います。

濾過をしない水槽で生物を飼育すると、生体の代謝により排出される糞などによって水がどんどん汚れていきます。

汚れは自然に発生するバクテリアの働きによって少しずつ分解されていきますが、水槽内という閉鎖的環境では自然に発生するバクテリアの力だけでは不十分なため、バクテリアが増えやすい環境にする必要があります。

バクテリアを増やすためには、バクテリアの餌となる有機物(栄養)と酸素、そしてバクテリアを定着させる濾過器(濾材)が必要で、濾過器の中にセットした濾材でバクテリアを増やしていきます。

バクテリアが増えて水質が安定してくるまでの目安は通常一か月程度と言われていますが、水温や水質などの水槽の環境や使用している機材によって大きく変わるため、完全に安定するまではもう少しかかります。よって、最初の数カ月は生き物は何も入れずに水を入れた水槽にろ過器だけを運転する空回しという工程が必要です。

バクテリアは空気中にも存在するので、有機物がある水槽内では濾過を空回しするだけで自然と増えていきますが、バクテリア剤と言われる添加剤を利用することでビーシュリンプを飼育するための水槽内環境ができあがるのを多少早める効果もあります。

ビーシュリンプ水槽立ち上げに有効なバクテリア剤

ビーシュリンプ飼育に使用する低床材「ソイル」について

広告

ビーシュリンプ水槽の立ち上げには「ソイル」という低床材を使用するのが一般的です。ソイルとは土を焼き固めたもので、昔からある大磯砂などの砂利にはない「栄養素」が含まれているのが最大の特徴で、まずはソイルから水中に溶けだした栄養素から発生する有害物質(アンモニアや亜硝酸)を分解してくれるバクテリアを増やすところから始めます。

ビーシュリンプの飼い方 【底床の重要性】

勘のいい人は、栄養素から有害物質が排出されるなら栄養素のない大磯砂などを使用すれば問題ないと思われるかもしれませんが、少なからず生体を入れた後は糞や残り餌などの有機物が栄養素となるため、生体を入れてから濾過サイクルが作られる栄養素のない低床材よりも、最初から栄養素があるソイルを使って生体を入れる前に水槽内環境を作ることができるといった部分でメリットが大きいソイルを使用するのが定番になっていて、それだけビーシュリンプはデリケートな生物なため、立ち上げは時間をかけてしっかりと飼育水を作ってから導入するのが望ましいです。

ソイルには「栄養系」と「吸着系」と呼ばれる性質の異なる二つの種類があり、水草を育成するために栄養素を多く配合されているソイルが栄養系、水草以外で使用する栄養素が少ないソイルが吸着系と認識しておけば良いでしょう。

ソイルは緩衝作用といってphが下がるように調整されていますが、緩衝作用は無限に継続するものではなく、ある程度の期間を過ぎると効果は薄れていきます。その効果の持続期間は吸着系ソイルも栄養系ソイルもそれほど大きな差はありませんが、バクテリアの働きによるる硝化作用でphは自然と酸性寄りの水質となるため、栄養素の多い栄養系ソイルの方が長期間酸性寄りの水質を保ってくれる傾向があり、栄養系ソイルの方が長い期間phが安定しやすく長期に渡って安定してビーシュリンプ飼育を楽しむことができるため、基本的にビーシュリンプ飼育に使用するソイルは栄養系ソイルをおすすめします。

▼ビーシュリンプ飼育のph値の重要性はこちらの記事をご参照ください

ビーシュリンプにとって良いPHの数値とは?

エアレーションは必須

ビーシュリンプは酸欠に弱いと言われていますが、酸素不足はビーシュリンプより先にバクテリアがダメージを受けてしまうので、結果的にビーシュリンプへのダメージに繋がります。特にフィルターの裏側や装飾品などの陰で水槽内に止水域ができるとそこに有害な物質が溜まりやすくなるので、濾過器の水流と合わせてエアレーションも行って、できるだけ止水域ができないように管理しましょう。

酸欠防止!ビーシュリンプ水槽に使うエアポンプお勧め5選

水質管理

ビーシュリンプは水質の悪化に弱く、立ち上げが不十分な水槽に入れると数日~数週間で死亡してしまうことが多くあります。

特にビーシュリンプ飼育に注意が必要な有害物質は、「アンモニア」と「亜硝酸」で、この二つの物質が多い水槽ではビーシュリンプを飼うことはできないといっても過言ではありません。よって水槽の立ち上げにしっかり時間をかけて行い適切な濾過を行っていれば、それらの有害物質はバクテリアの働きによって速やかに分解されていき、最終的に硝酸塩という物質が残ります。

硝酸塩はビーシュリンプにとってそれほど毒性の強いものではないものの、多すぎると餌を食べなくなったり繁殖をしなくなったりすることがあります。

そして、硝酸塩は水槽内に発生する通常のバクテリアでは分解することができない物質で、水質が安定すればするほど蓄積してくため、換水といって少量の水を定期的に交換して排出するのが一般的で、通常の飼育下ではこの硝酸塩を減らす補助的な目的で換水を行う必要があります。

ビーシュリンプ飼育に限ったことではなくアクアリウム全般にいえることは、有害物質を無くすことだけではなく、有害物質が増えすぎないように管理することで、もちろん「アンモニア」や「亜硝酸」はエビにとって猛毒で、直接「死」に繋がるものですから、立ち上げや濾過をしっかり行わないといけないものですが、ビーシュリンプを長期に渡って飼育し続けるには、立ち上げた後も良い状態をキープする「水質管理」が非常に大切なポイントとなります。

▼低床の清掃と換水が同時にできるプロホースが最もおすすめ

水槽のサイズ

ビーシュリンプは体が小さいので小型の水槽でも飼育できますが、水質や水温の変動には弱い傾向にあるため、初めて飼育する場合は水質や水温の変動が大きい小型水槽よりも変動が少なく安定感の高い60㎝水槽の方が適しています。

水槽は水を入れると非常に重くなりセット後は移動ができなくなるので、電源や水道の近くなど導線をじっくり考慮して専用の水槽台の上に置いて設置しましょう。

▼水質や水温の安定感が高い60㎝水槽が最もお勧め

▼小型水槽なら水量が稼げる30㎝キューブ水槽や45㎝水槽がお勧め

ビーシュリンプ飼育に適した濾過器の種類

水槽の大きさに合った濾過能力を有した濾過器であればあまりこだわる必要はなく、安価な濾過器でも十分に飼育が可能です。

▼60㎝未満の水槽は安価で濾過能力の高いエアリフト式の底面フィルターがお勧め

▼60㎝以上の水槽は濾過能力の高い外部フィルターを検討しても良いでしょう

ビーシュリンプ飼育の水温管理

ビーシュリンプの飼育に最も適した水温は22~24℃程度で、低水温には結構強く、15~20℃程度では活動が鈍るものの、病気になったり死に至るようなことはあまりありませんが、15℃以下の状態が長期間続くと弱い個体は死亡するケースもあります。

特に注意したいのは高水温で、28℃を超えるとかなり厳しい状況となるため、水温が上がりやすい夏の時期には水温が上がらないようにする対策が必要です。

水温が上がらないようにするには、照明の点灯時間を短縮したり扇風機型の水槽用の冷却ファンやクーラーを設置するのが一般的ですが、エアコンで室温を調整し水槽用冷却ファンを併用するのが最も効果があります。ただし、冷却ファンは水が蒸発する際の気化熱で温度を下げるので水槽の水の蒸発が激しく、減った分の水を足してあげる必要があります。

ビーシュリンプ飼育に適した照明

使用する水槽に合ったスペックで、アクアリウム用のものであれば特に専用の照明を用意する必要はありませんし、多少光量不足でもビーシュリンプ飼育には全く問題はありませんが、照明が全くない状態で飼育すると、体色が薄くなってしまったり繁殖しなくなることもあるので最低限の照明は設置してあげましょう。

ここ数年アクアリウム用のLED照明も一般化してきました。電気代や発熱量の面でもリスクが少ないLED照明がおすすめです。

▼ビーシュリンプ飼育には安価な照明で十分です。

また、照明は少なからず水温が上がる原因になるので、時間を決めて点灯させると良いでしょう。点灯時間の目安は4~6時間程度で、点灯時間の長さについては極端に長かったり短くなければ飼育者のライフスタイルに合わせて点灯時間を決めても全く問題はありませんが、タイマー制御で点灯時間を自動で管理すると飼育の負担を減らすことができます。

その他装飾品など

ビーシュリンプの飼育は水槽内に装飾品を入れなくても問題ありませんが、ビーシュリンプは底生生物なので、水槽内の表面積が大きければ大きいほど活発に活動します。

とはいえ、装飾品が多すぎて止水域ができると調子を崩す原因にもなるので、水槽のサイズの半分ほどの流木に釣り糸などでウィローモスを巻き付けたものを一つ入れてあげるだけで十分です。

ビーシュリンプ飼育に必要な道具

飼育に直接関わるもの以外にも必要な道具があるのでチェックしてみましょう。

  • 選別ネット
  • ハサミやピンセット
  • サテライトなどの隔離容器
  • 換水に使うバケツなど
  • 電源タップなど

基本的にビーシュリンプ専用のものは必要ありませんが、選別ネットに関しては一般的な観賞魚用のものではまるで役に立たないので専用のものがおすすめです。

電源タップはパソコン用などのACアダプター対応のものが便利です。

ビーシュリンプの飼育方法「導入についての注意点」

水槽が立ち上がったら初めてビーシュリンプを水槽に導入となるわけですが、導入の際の注意点をいくつかまとめてみます。

水温合わせと水合わせ

水温合わせとは、自分の水槽の温度に購入したビーシュリンプが入っているビニール袋の温度を合わせることです。暑い季節や寒い季節以外はそれほど慎重になる必要はなく、極端に差がある時以外は水温合わせはしなくても大丈夫です。

水合わせの注意点は、ビーシュリンプが入っている袋の水と導入する水槽の水質に大きな差がある時は2~3時間ほどかけてゆっくりと水槽の水に慣れさせていきます。特に水槽の水の方がPhが高い場合は慎重に行う必要があります。

水合わせのやり方は、エアレーション用のチューブを使った点滴法で行うのが一般的です。即席で作れるので導入前に材料を準備しておいても良いですが、市販の水合わせ用キットを利用しても良いでしょう。

水合わせの時間は長ければ長いほど良いというものではなく、最初は2~3秒に一滴程から始め、徐々に早くしていき袋に入っていた元の水量の5倍程度になるまで2~3時間程度を目途に行い、水合わせ後は速やかに水槽の中に入れてあげましょう。

「ビーシュリンプの移動」失敗しないビーシュリンプの水合わせの方法を伝授

導入後の動きに注意

水合わせが終わり水槽にビーシュリンプを入れたあとすぐにツマツマと何かを啄んでいるような仕草をしているようであれば、とりあえず水合わせは成功です。

導入して24時間後以降に物陰に隠れてじっとしている状態だと要注意です。これは水合わせに問題があったというよりも導入した水槽の水質に問題があったというケースが大半で、しっかり時間をかけて水槽の立ち上げを行っていれば、毎日の少量の換水で大体持ち直しますが、気が付くのが遅くあまりにもダメージが大きい場合は、そこから対処しても数日から二週間程度断続的にポツポツと死んでいく個体が出てきます。

導入後数カ月は頻繁に換水する

時間をかけてしっかり立ち上げた水槽でも、半年から一年くらいはバクテリアの動きが不安定でバランスが崩れやすくなっています。そこに新たに生物が入ることによってさらに不安定となるため、ビーシュリンプを水槽に入れてから数カ月は週に2~3回程度の換水を行うことをおすすめします。

水槽内のビーシュリンプの餌寄りや動きが良く、抱卵個体なども見られるようになったら少しずつ換水の頻度を減らしていっても良いでしょう。換水の頻度を減らしたことによって調子が下がるような場合は再び換水の頻度を上げて落ち着くまで様子を見ましょう。

導入後二週間は手を加えない

ビーシュリンプは新しい環境に移ると多くの個体が脱皮をしてその環境に適応していきます。よって導入後二週間は最も個体がデリケートな時期で、今後の生死の分かれ道となる期間ですから、換水以外に手を加えるのはご法度です。餌やりはもちろんフィルターの清掃やレイアウトの変更なども行ってはいけません。

ビーシュリンプの餌やりはいつから?

ビーシュリンプは水槽内の微生物や苔などを良く食べているので、導入後すぐに餌を用意する必要はなく数か月後でも大丈夫で、抱卵個体や稚エビの姿が見えだしてから与えるようにしていっても遅くはありません。

餌の量の目安は、調子が良ければ個体数に関係なく食べるだけ与えても良いですが、30分以内に跡形もなく食べきれる量を与えましょう。

ビーシュリンプは悪食で何でもよく食べますが、残り餌による水質の悪化に弱いため、嗜好性が良く水を汚しにくいビーシュリンプ専用のものがおすすめです。

▼嗜好性抜群のビーシュリンプ専用フード「ビーグロウス」

▼餌寄りが良く水を汚しにくい餌「Ebita Breed quatro2」

ビーシュリンプの飼育方法「導入後の管理」

しっかりと水槽を立ち上げてから導入しても、その後の管理が悪ければ全滅してしまうこともあるのがビーシュリンプです。

導入後に元気な状態をキープするための5つのポイント

  • エビが一か所に固まってじっとしていませんか?
  • 餌寄りは良いですか?
  • 常時抱卵個体はいますか?
  • 高速ツマツマしていますか?
  • 脱皮はしていますか?
特に導入後半年以上経過して上記の条件を満たしていない場合はより一層注意が必要で、今すぐにではないにしろいずれ調子を崩し全滅という最悪の事態も想定できます。この中の項目全てに該当する飼育は簡単ではありませんが、毎日しっかりと観察していれば小さな変化に気付くこともできるので、手遅れになる前に対処ができるようになります。

対処をしないと高確率で全滅する可能性が高い例

  • 餌を食べない
  • 水草や流木などの下に隠れて出てこない
  • エビが一か所に固まっている
  • 抱卵しても稚エビが生まれない
  • 換水すると死亡する個体が多い

立ち上げてから一年以上維持している水槽はリセットした方が良いでしょう。立ち上げ後間もない場合は、立ち上げ期間が足りないか換水不足かのどちらかなので、換水の頻度を上げて様子を見ましょう。

世代交代するまでは決して油断しない

ビーシュリンプは多少の水質の変化には耐えられる生き物で、自分の水槽内での移動はもろともしないくらい丈夫な生き物ですが、新しいお宅への移動に関しては環境に慣れることができずに死んでしまう個体も残念ながら結構います。これはどうしても免れないものですから、できるだけ良い環境で迎い入れる準備をして、導入後も良い状態をキープする努力をしましょう。

その中で運良く生き残った丈夫な個体が繁殖して新しい世代が生まれてくれさえすれば、それは自身の水槽内の個体ですから、そこからはどんどん繁殖するようになり驚くほど丈夫だと感じるようになります。

ビーシュリンプの飼育方法「繁殖」

広告

ビーシュリンプ飼育の醍醐味である繁殖は、飼育者にとっても一大イベントとなる最大の楽しみの一つです。

ビーシュリンプはメスが脱皮したタイミングでオスがメスに飛び掛かり交尾をします。交尾の時間はほんの一瞬なので中々見る機会がありませんが、水槽内でオスがスイスイと激しく泳ぎ回る繁殖行動「抱卵の舞」が始まったら脱皮するメスを探してみると交尾の瞬間が見られるかもしれません。

ビーシュリンプは条件が整うと次から次へと抱卵個体が現れるほど繁殖力が旺盛な生き物なので、まずはビーシュリンプが繁殖しやすい環境づくりが大切です。

ビーシュリンプの繁殖のカギは脱皮の頻度

ビーシュリンプはメスが脱皮するタイミングで交尾を行うので、まずは脱皮をしてくれないと繁殖しません。

脱皮のきっかけは主に体の成長によるものですから、体が成長していないと脱皮はしません。ですから、成長させてどんどん脱皮をさせるためには、きれいな水でたくさんの餌を食べさせることが一番の近道です。

ビーシュリンプが繁殖しやすい水質

水質といってもphや硬度などといったものではなく、しっかりと時間をかけて作った濾過サイクルによってできた「こなれた水」こそがビーシュリンプにとって最も繁殖しやすい環境です。

ビーシュリンプの繁殖を促す方法

条件が整うと次から次へと繁殖が行われるビーシュリンプですが、水槽内の濾過サイクルは良くても季節などのタイミングや個体の性格によってうまく繁殖ができないこともあります。

その場合は、繁殖しやすい月齢「満月と新月」で換水量を少し多めにしたり水温を1~2℃上げてみるのも良いでしょう。新鮮な水や水温変化はビーシュリンプの代謝を上げる作用があります。代謝が上がれば脱皮の回数が増えるためより繁殖しやすい条件となります。

繁殖を促す添加剤の効果は?

ビーシュリンプは問題なく順調に飼育していると自然に殖えていく生き物ですが、水槽内環境に問題がある場合は、まずそこから改善していかないと繁殖どころの話ではなくなります。

確かに、タイミングや成長具合、ビーシュリンプの種類や季節などでも繁殖の頻度に変化が生じることもあり、繁殖を促す添加剤なども存在ますが、飼育が上手くできていれば特別必要のあるものではないので好みで使用しても良いです。環境は良いのに繁殖しない場合は、餌の種類を豊富に与え換水の頻度を上げるだけでも成長速度が速まるので、脱皮をすることで成長・繁殖する甲殻類にとっては有効な手段です。

水中のミネラル分を指摘する方もいますが、ソイルを使用している以上ミネラル分の不足はありませんし、換水に使用する水道水にもビーシュリンプが必要とする最低限のミネラル分は含まれています。

元々高硬度での飼育されてきた「シャドー系」や「タイガー系」のエビに関しては、日本の水道水では地域によってミネラル分の不足で脱皮不全などを起こす場合がありますが、レッドビーシュリンプやブラックビーシュリンプなどのノーマル種に関してはソイルと水道水のみで十分なミネラルを補うことができます。

もちろん添加剤を使用することは非推奨ではありませんが、ミネラル分は個体の発色が良くなるのみで繁殖を促すという効果はそれほど期待できるものではありません。

ビーシュリンプ飼育トラブルQ&A

ビーシュリンプが死亡する原因の大半が水質によるものです。

良い水質を管理するには計測機械などで数値を計るのも有効な手段ですが、生き物には科学的には解明できない謎も多く飼育者の経験から来る「感覚」に頼るのも一つの方法です。

ビーシュリンプを飼育していると必ずといっても良いほど起こるトラブルについて、過去に当ブログにいただいたお問い合わせの内容も含め、様々なケースについて解説していきます。

抱卵はするけど稚エビが生まれない

抱卵はするけど稚エビが生まれないという例は結構頻繁に起こり得るケースで、主に二つのパターンがあります。

  • 稚エビが生まれる前に親が卵を離してしまう
  • 稚エビが生まれても大きくなる前に死んでしまう

親が卵を離してしまう「脱卵」は水質が悪い水槽で度々起こることがあります。

稚エビが孵化する前に親が卵を離してしまうケースと卵を抱えた状態で脱皮してしまうケースもあります。いずれも水質が不安定だったり換水量が多すぎて水質の変動が激しかったりなどが主な原因ですが、対処法は換水の頻度を上げて一回の換水量を減らしたり、濾過器のメンテナンスをして様子を見る方法をおすすめしますが、3年以上リセットをせず長期維持している水槽は回復させるよりリセットしてしまった方が後々の管理が楽です。

中には抱卵個体がいる場合は換水しない方が良いという人もいますが、常時抱卵個体がいると一生換水できないことになり、むしろその方が問題が発生する確率が上がります。少量の換水程度では影響はないので安心してください。

抱卵するけど稚エビが生まれてこない場合も水質の安定化を目的にメンテナンスを進めると良いですが、オスの数を減らしてみたり抱卵個体をサテライトで隔離するのも稚エビを多く残すには有効な方法なので、水質への対処をしても改善の兆しがない場合は試してみると良いでしょう。

換水するとエビが死んでしまう

換水するとエビが死んでしまう場合は、換水前の時点ですでにダメージがあるエビが多く、換水という大きな環境変化で止めを刺してしまったというケースが大半です。

  • 一回の換水量を減らし回数を増やす
  • 根本の環境を見直す
  • 換水する水道水の塩素量とphを調べる

換水によって死亡してしまう個体は残酷ですが諦めるより他ありません。それよりもどうしてそうなったか原因を探る努力をしないと同じことの繰り返しとなります。

規定量の塩素除去剤やアクア用浄水器を通した水はほとんどの塩素を除去してくれますが、浄水器のフィルターが古かったり塩素除去剤の分量を正しく使わないと塩素が除去されていない場合もあります。また、自然に塩素が揮発するまで待つ汲み置きの水を使用している場合は、中々塩素が抜けきらない場合もあるので、どのくらいで塩素がなくなるかを調べるためにも何度か計測してみた方が良いでしょう。

換水に使う水道水のPHが高い場合

水槽の水質よりPhが低い場合はさほど気にしなくても大丈夫ですが、ソイルを使用している水槽は自然と弱酸性に傾けてくれる効果があるので、換水に使用する水が水槽水よりもPHが高い場合は、一回の換水量を減らして時間をかけて換水すると良いでしょう。

多少手間はかかりますが、様子を見ながらアクアリウム用の調整剤を使用してPhを下げてから換水するのも有効な手段です。水質の調整をする場合は急激な変動が起こらないように必ず試験紙などでチェックしながら行ってください。

最初は元気だったのに段々と元気がなくなり全滅しそう

水合わせや導入元のエビに原因があったというケースもありますが、水合わせに失敗した場合は数時間で死亡することが大半ですし、導入元のエビが弱っていた場合も数日以内に死亡してしまうことが多く、数週間後以降に元気がなく死亡していくのは立ち上げや水質の管理が不十分なケースが大半です。

水質が原因の場合は特に大きな個体から先に死亡していくことが多いのでわかると思いますが、個体のサイズに関係なく死亡していくのであれば立ち上げが不十分だった可能性もあります。

時間をかけて立ち上げ、導入後も定期的に換水などのメンテナンスを行っていれば全滅という最悪の事態は大抵防ぐことができます。

稚エビは餓死しやすいと聞きましたが稚エビ用の餌を用意した方が良いですか?

ビーシュリンプは魚のように痩せたりなど栄養状態の確認ができないので見た目で判断するのは非常に難しいですが、水槽内のエビの動きを見ていると常に手足を動かして何かを口に運んでいる仕草が見られるはずですから、餌を与えなくても水槽内には常時食べるものがあるというわけです。

特に稚エビの内は脱皮の回数が多く栄養が少ないと餓死しやすいという意見も聞かれますが、特に稚エビの内は殻もそれほど硬くないので、脱皮自体が体力を消耗するほどの大仕事にはなりませんし、赤ちゃんだからといって親に餌をもらわないと生きられない生物でもなく、生まれてから数時間後には自分で餌を食べられるような生物です。

ですから、ビーシュリンプが餓死するのは都市伝説だと思ってもらって結構です。

よって、餌を与えなくても死ぬことはありませんし、パウダータイプの餌を与えることによってソイルの隙間に餌が入り込み水が悪くなったりする方がよほど危険だと言えます。

ただし、餌をまったく与えない飼育をしていると脱皮直後の動けない個体は餌と認識されて仲間に食べらてしまうことはあります。しかし稚エビ用の餌を与えたところで親が奪い取ってしまうので満遍なく餌が稚エビに行きわたるかについては疑問です。

気になる方は孵化するまで抱卵個体をサテライトで隔離したり、ウィローモスなどを少量水槽に入れるだけでも稚エビの生存率は上がりますよ。

以前ビーシュリンプの飼育マニュアルというものを購入しましたが上手く行きませんでした

そのマニュアルの内容については知りませんが、だれでも簡単に殖やせるなどといった謳い文句で、悩んでいる方を煽るような販売をしている業者については信用しない方が良いでしょう。

マニュアルということは基礎的なビーシュリンプ飼育方法については書かれているとは思います。

ですが、本屋などで販売されている書籍も基礎的な飼育方法は書いていますし、書籍として販売されているものですからそこに金銭が発生するのは理解できますが、そもそも生き物を飼育することにマニュアル一つで通用するものではありませんし、飼育する地域による違いや、環境、設備などはそれぞれ違うわけですからマニュアル一つで片づけられるものではありません。

その販売者のオリジナル商品があって、熱烈なファンがそれを使ってビーシュリンプを飼育したいのなら良いでしょうが、マニュアルまで販売して自社製品を買わせるセコさには同じビーシュリンプを飼育販売した経歴がある者としてはいかがなものかと思います。

それなら様々な商品を使って長く活躍されている有名なブリーダーさんに頼った方が相当いい結果が得られますし、無名の僕ですらブログやSNSのDMなどで質問を受けることがありますが、いくら商売とは言え、上手な飼育方法を教えるからお金をくださいと言うのはちょっと違うかな?と思いますし、この記事も有料級の記事だと思って書いていますが、飼育方法などのマニュアルを作ってお金を貰おうなんて思ったこともないです。

ビーシュリンプの飼育方法「まとめ」

ビーシュリンプを飼育する際の立ち上げや管理方法などを重点的に解説していきましたが、必ずしも上記の内容通りに管理していれば爆殖が約束されるものではなく、どんな生き物を飼育するのでも、数字だけではなく最終的には自分の目で見て触ってみて初めて理解できる感覚的な部分も大きいので、上記の内容を参考に管理を行っていただきたいと思います。

特に注意したいのは、自分の水槽と他人の水槽では必ずしも同じ環境ではないということで、うまく飼育できている人の話を参考にして自分の水槽を管理したところで全てがイコールコンディションとはならないところですが、経験を積むことで見えてくることも多く、たとえ他人の水槽でもベテランの飼育者が実際にその水槽を見ると一瞬で調子の良し悪しがわかるものです。

よって、最終的には様々な経験を経て自分のやり方を確立していくのが最良の飼育方法です。

ですから、上記の内容は初心者向けの基礎中の基礎でしかなく、ベテランの飼育者にとっては当たり前の内容となっています。

では、最後にもう一度飼育方法についてまとめます。

  • 水槽の立ち上げはソイルを使用しじっくりと時間をかける(二ヶ月以上)
  • 立ち上がった後も換水などの定期的なメンテナンスを行う
  • 導入後もエビの活性が下がらないよう徹底的に水質管理を行う

以上の三項目を重点的に管理して、トラブルの発生を極力抑えつつ状況に応じた対策をしていけば確実にビーシュリンプは爆殖します。

広告

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人



コメント

コメントする

目次